カテゴリー: 公共、住宅 (page 36 of 53)

230. 「13度です。」温度の表現と感じ方


とても暖かい日でした。マインランド尾去沢という鉱山跡を見学できるテーマパークへ行った時のことです。駐車場に車をとめて、いざ出陣!とのりこんだその入り口で私はこの看板を見つけました。

「見学コースは13度です。上着などをお持ちください。」と書かれた看板の写真

この看板の意味、すぐにわかりますか?13度って?

このテーマパークの見学コースでは、坑道の奥深くまで徒歩で進みながら当時の採掘現場を疑似体験することができます。坑道の中は、薄暗く湿っていて、ひんやりと肌寒いところでした。「13度」とは気温のことで、この看板は、ひんやりと肌寒いから上着をお持ちください、というちょっと気の利いたアドバイスだったのです。

しかし、いきなり13度と言われてもそれが寒いかどうか、すぐには判断が付きませんよね。

もちろん、夏の薄着では肌寒く感じられ、冬の厚着では暖かく感じるという違いはあると思います。しかし、その違いを理解した上で、13度とは寒いのかどうかを判断するのはとても難しいことだと思います。もともと、肌寒い場所という情報があれば、13度という数字は、その程度を示す基準として利用できたかも(?)しれませんが、初めての場所でいきなり詳細な事実を突きつけられては面食らってしまいます。せっかくの気遣いがもったいないですよね。

この場合は、「見学コースは肌寒いので上着をお持ちください。」というアドバイスの方が、ズバリ“13度!”と気温を書くよりも、自然で親切だと感じました。また、寒さの程度を伝えたいのであれば、気温よりもイラストなどを添えた方が効果的だと思います。

正確で客観的な情報があれば充分だとは限りません。利用者にとって分かりやすい言葉やイラストを心がけたいものです。

関連ページ
マインランド尾去沢

226. お釣りが見える自動精算機


梅雨入りということで、お出かけには車が欠かせないシーズンになりましたね。皆さんもよくご利用になられるかと思いますが、今回は100円パーキングなどに設置されている自動精算機のお話です。

こんな場所に設置されている自動精算機です

この自動精算機。お釣りが落ちてくる受け皿の上に鏡がついています。(下図参照)

鏡に100円玉が2枚映っています

当然のことながら、「髪型キマッテルカシラ?」と自分に酔いしれるための鏡ではありません。お釣りがどの辺りにあるのかを一目で確認するためのものです。「お釣りはどこかな〜?」と受け皿の中をごそごそと探す必要はないのです。

ゲートに車を寄せて、自動精算機にて料金を支払い、出庫する──この一連の流れの中では、後ろに並んでいる車からのプレッシャーを受けながら、いろいろな作業をしなくてはなりません。焦って思わぬミスを起こしてしまうこともあるでしょう。

「お釣りの所在」という、機械側から発信される情報を得られることにより、ユーザは「お釣りがどこにあるのか探す」という作業を行わなくて済むのです。機械側からのサポートにより、ユーザは気持ちに余裕を持って利用することができると思います。

223. ドア全体で主張する非常口


非常口マークが描かれた非常ドア

これは、スウェーデンで見つけた非常口です。ドア全面に、緑色のマークが描かれています。

人の大きさは、等身大とは言わないまでも、かなりの大きさがあります。なんと大胆な非常口でしょう。

私は、これを一目見た時、正直なところ「ドア全面が緑色なんて、無謀なことを!」っと思いました。こんなにも大きな面積を緑色にするなんて、目立ちすぎて嫌にならないだろうか?近くに高級なものを置いたら安っぽく見えるかもしれないし、緑色に合った家具やファブリックの配色も考えなくっちゃいけない・・・そんなことを考えたのです。

しかし、これを見つけたのは、ストックホルム最大(唯一?)のデパートの婦人服売り場です。周りを見渡すと、流行色がちりばめられた店内で、この非常口は調和を保ちながら存在していました。邪魔者としてではなく、愛着のわくキャラクターのように。

非常事態には、頭がパニックになりながらこのドアを探すでしょう。火の手が上がっていたら、視界が狭くなっているかもしれません。そんな時の見つけやすさ、思い出しやすい鮮烈さ。そのコンセプトを前面に押し出し、空間のスパイスにしてしまった潔いデザインには脱帽です。

「見つけやすさ」と空間における配色の難しさを感じました。

補足

非常口に関する豆知識をひとつ。非常口のマークは1982年に全国公募で選ばれた作品を元に、多摩美術大学教授の太田幸夫先生を中心とするグループが作成しています。その後「ISO(国際標準化機構)」が日本の非常口マークを国際基準に指定したため、世界各国で日本のマークが取り入れられているのだとか。非常口マークは日本が発信した世界標準なのです。

関連ページ
使いやすさ日記『105. 非常口サインの色分け』

215. 出入りしやすいじゃないの!~京浜急行横浜西口改札


その日、実家に帰ろうとしていた私は、横浜駅の京急西口へ急いでいました。平日の夕方で、駅周辺も駅の改札も帰宅する人でごったがえす時間だったと思います。

「あれ?」と思ったのは、改札を通り過ぎた時でした。帰省のため大荷物だったのですが、あんな混雑した中を誰にもぶつからずに改札を通り抜けたのです。急いではいましたが、ちょっと気になり改札へ戻って確認してみました。すると、改札の出口と入口がきっちり分かれていたのです。しかも、単に分かれているのではなく、出口が以下の写真のように入口とズレて設置されてるじゃないですか。

改札

どうやら、この形状のおかげで改札周辺に下図のような人の流れができ、私はその波に乗ってするりと改札を通過したようです。

改札を出た後の人の流れ

改札を通ろうとして、前から人が来たため他の改札に移るという経験は、私だけでなくみなさんもあると思います。特に「遅刻しそうなのに〜」などと急いでいる時には、相手のせいではないと分かっていても、腹立たしいですよね。出口専用、入口専用、と分かれている場合もありますが、だいたい人が殺到してぐちゃぐちゃになっている気がします。

その点この改札では、出入り口が分かれているだけでなく、ずらして設置されているため、人の流れができて出入りしやすく、うまく作られていているなぁと感心しました。

213. エレベータの開閉ボタンに“ふりがな”


なんの変哲もない普通のエレベータ。何を期待することもなく乗り込み、行き先階のボタンを押そうと操作パネルに向かったその瞬間に目を奪われました。

エレベータの開閉ボタンに“ふりがな”

駆け込んでくる人のために「開」を押してあげたつもりが、間違えて「閉」を押してしまい、嫌がらせの如くドアを閉めてしまったという経験、きっと皆さんもお持ちでしょう。なぜそんな押し間違いをしてしまうのかについては『15.エレベータの開閉スイッチ』に詳しいので参照してください。

さて、今回私が乗り合わせたエレベータでは、判別の難しい二つのボタンに「ふりがな」をふるが如く、「開く」「閉まる」と書いたシールが貼られていました。漢字一文字にはせず、敢えて「送りがな」をつけることで文字数を違えています。シールの大きさにも強弱をつけていますし、四隅のカットも、「開く」の方は丸く、「閉まる」の方は少し角を持たせて、と工夫しています。

見た目を気にしなければ、ちょっとしたアイディアで、案外簡単にユーザビリティを向上させられるってことを教えてくれている気がしませんか?

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