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124. ユーザ・コンテクストを見るということ ~エアコンのタイマー


今回はエアコンのタイマーについてユーザ・コンテクストという観点から考察してみたいと思います。

現在、エアコンのタイマーの設定方式には大別して2種類あります。「何時何分になったら切れる/入る」というものと、「今から何時間後に切れる/入る」というものです(ここでは便宜的に時刻指定型と時間指定型と呼びます)。

リモコンに時計回路を持たなければならないせいか、比較的高級クラスの製品に時刻指定型が多いように感じます。

果たしてユーザにとってどちらのタイプがより使いやすいのでしょうか?

ユーザは典型的にどういったシーンでエアコンのタイマー機能を利用するのでしょう?

ひとつには朝起きる時間に部屋が快適な温度になっていて欲しい、というニーズが想定できます。おそらく夜寝る前に、次の朝起きようと思っている時刻にセットしようとするでしょう。ここでもし、エアコンが時間指定型だったら、寝ようとしている今現在の時刻からその時刻までの時間を数えなければなりません。大抵の人は朝起きる時間はだいたい一定でしょうが、寝る時間がまちまちという人は少なくないでしょう。そういう人は毎晩このちょっとした計算タスクを強制させられることになってしまいます。この観点からはどうも時刻指定型の方にアドバンテージがありそうです。

もうひとつのニーズは、夜寝つくまでしばらく運転して、しばらくしたら勝手に切れてほしい、というものでしょう。この場合は、だいたい自分がぐっすり寝付くまでの時間は一定で、1時間とか2時間といった指定をしたくなるでしょう。もしエアコンが時刻指定型だったら、今の時刻に1時間ないし2時間を足した時刻を設定しなければなりません。やはりこれも毎日寝る時間がまちまちだという人にはちょっと面倒な作業です。この観点では時間指定型に軍配があがりそうです。

つまり、いわゆる「おやすみタイマー」と「おはようタイマー」では最適な設定方法が違ってしまうことになります。でも、おそらくこれがユーザが実際の現場(家庭)でエアコンを利用する際のコンテクストだと思います。是非こういう観点でリモコンを設計してみていただきたいです。>エアコン・メーカー様

また、今度エアコンを新調しようとしている方で、上記のような利用シーンにピンと来る方は、選定時にリモコンのタイマー指定方式を気にかけてみてはいかがでしょう?ちょっとメーカーは失念しましたが、まさにこのタイプ(おやすみは時間、おはようは時刻で設定)の設計になっている機種を目撃したことがあります。ユーザ・コンテクストに敏感な方達が設計しているのでしょう。こういう製品を選ぶと、毎日の就寝前の「儀式」がちょっぴり快適になるかも知れません。

2001年11月21日 補足
 道具眼プロジェクトの方で、現行モデルの実態調査をしてみました。

123. これもアンビエント?~バックライトの色でエラー表示


インターフェイスの世界で、アンビエント・インターフェイスというムーヴメントがあります。これは人間が周辺知覚情報を使って情報を得ていることを利用した考え方で、例えば自動車のエンジン音やコンピュータのHDDのカリカリいってる音を何気なく耳にして「あぁ今日もちゃんと動いてるな」と感じたり、急に音がかわると「あれ、何かおかしい」と気づくことができたりする。そういう情報チャンネルをもっと積極的に利用して、「ダイアログ等で常に明示的に出すとウザいけど、ユーザが気になったらちょっと意識を向けるだけで状態を把握できるさりげない”気配”による情報提示をしよう」という考え方です。

元はMIT(マサチューセッツ工科大)の石井裕教授率いるTangile Media Groupが提唱した概念で、彼らは例えば、ネットワークトラフィック等を風車の動きで表現したりといった実験を行っています。

さて、今回見つけたのは、アンビエントというにはちと明示的すぎるかも知れないんですが、ブラザーの新型レーザープリンターの例です。

こちらの写真で見られるように、液晶画面のバックライトの色で状態表示を行っているのです。プリンタの表示部って、一般的に小さくて、なかなか表示に気づきにくいのですが、このように異常時に赤くなっていれば、たまたま通りかかった人が紙切れなどのトラブルに気づいて手当てしてくれる可能性が高まるんではないでしょうか。

携帯電話のおかげで、バックライトの多色表示がこなれてきたのか、様々な製品に利用されるようになってきましたが、その多くはエンターテイメント用途でした。その中にあって、本製品は上手く使いやすさのためのフィードバック手法として利用していると言えるでしょう。

関連ページ
tangible media group (MIT)
ブラザー HL-1670N/HL-1650製品情報

122. 照明スイッチに見る現場の工夫


壁の照明スイッチ
それぞれのスイッチにシールが貼られています

この写真は、先日行った焼肉のチェーン店(牛角 浜田山店)の照明や換気扇などの集中パネルです。それぞれスイッチの下に何のスイッチなのか個別に書いてあるのですが、それに加えて何色かに色分けされたシールが貼られています。

早速お店の人にインタビューして話を聞いてみました。

これらの色分けは、まとめて操作するものをグループ分けしているものだそうです。

改めてよく見ると、

  • 黄:お客さんゾーン
  • 赤:厨房や控え室などスタッフのゾーン
  • 緑:店頭(外)
  • 青:退出時操作

というように分類されているみたいです。

元々のパネルでは毎回それぞれのスイッチの意味を考えないと操作できませんでしたが、このようにまとめてラベルをつけることによって、(ラベルをつけるときだけ)一旦スイッチの意味を考えてしまえば、毎日の操作はそれぞれのラベルだけを考えればよくなります。

先人の計算(Pre-computation)の良い一例だと思います。

121. どれを選択中? ~Windows XP 終了ダイアログ


写真はMicrosoft Windowsの最新版、Windows XPの終了ダイアログです。Windows95/98ではラジオボタン、WindowsME/2000ではプルダウンメニューだった、システム終了、再起動、サスペンド、休止状態といった選択が、XPではボタンになりました。「OK」ボタンを押さなくて良い分、操作は簡単になりました。

しかし残念な点もあります。ごらんの通り、各ボタンの選択状態を示す強調表示が弱く、目を凝らしてみないと違いがわからないんです。

写真1. 「スタンバイ」を選択した状態
写真2. 「電源を切る」を選択した状態
写真3. 「再起動」を選択した状態

単にデザイナーの配慮が足りなかった、とも取れますが、あれだけ「エクスペリエンス」を強調しているMicrosoftのことですから、もう少しつっこんで分析してみましょう。

原則、マウス操作を前提としているので、フォーカス表示は不要、というかむしろない方が自然なのかもしれません。キーボードで選択→リターンする場合に困りますね。マウスの場合でもポイントした場合はフォーカス表示になりますし。

同様の問題はタッチパネルのカーナビなどでも見られます。直接目的のボタンをタッチやマウスクリックで指定する場合には、あらかじめ何かしらのボタンにフォーカスされているのは不自然です。しかしカーソル移動でも選択できるようにしようと思うと、逆にどこかにはフォーカスがあたっていないと不自然です。

もしかするとこの辺りのジレンマであまり目立つフォーカスにできなかったんでしょうか?

いずれキーボード操作は上級者しかしないわけなので、最初はフォーカス無しで、カーソルキーが押されて初めて目立つフォーカスがあらわれる、なんてのはどうでしょうね?

120. ネット通販、表示に規制


2001年10月24日付 日本経済新聞からの引用です。

「 インターネットを利用した通信販売の急速な普及を受け、経済産業省は二十三日、特定商取引法で業者に義務付けている「分かりやすい申込み画面の表示」についてガイドラインをまとめた「注文」ではなく「送信」など紛らわしい表紙をしたり、申込み内容の訂正方法がないケースについて「購入者の意に反して契約の申込みをさせる行為にあたる可能性がある」と指摘、画面表示の適正かを通して消費者保護を強化したい考えだ。(中略)申し込み表示で問題となる可能性があるとしたのは、最終的な申し込みボタンなどに「注文」や「購入」といった言葉がないケース。例えば「注文」ではなく、「送信」と表示されていたり、申し込みボタンの近くに「プレゼント」など有償契約ではないと誤解するような表示がある場合は違反の恐れがあるとした。 」

インターネット通販は、外に出かけなくても自分が欲しい商品を手軽に注文することができ非常に多くの人が利用している反面、商品や数量を誤って送信改め注文する可能性を多分に孕んでいます。ユーザがどんなに気をつけても紛らわしい表現が散乱しているユーザビリティの低いサイトでは、ユーザの本来欲しいモノを注文できなかったり、関係ない商品をいつの間にか購入することになったりとユーザにとっては憤りを覚えることもあるでしょう。ネット通販側にとっては、新規のお客さんと同じくらいリピーターも重要なお客さんではないでしょうか。しかし、ユーザは賢いものでこのようなユーザビリティの低いサイトには二度と訪れないでしょう。つまり、このようなサイトは「リピーターは少なくなり、国からは行政処分が下り存続不可能な状態に陥る」ことが予想されます。ネット通販サイトのユーザビリティが高いことは、お互いによい結果となることにつながるのではないでしょうか。

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