今回はエアコンのタイマーについてユーザ・コンテクストという観点から考察してみたいと思います。

現在、エアコンのタイマーの設定方式には大別して2種類あります。「何時何分になったら切れる/入る」というものと、「今から何時間後に切れる/入る」というものです(ここでは便宜的に時刻指定型と時間指定型と呼びます)。

リモコンに時計回路を持たなければならないせいか、比較的高級クラスの製品に時刻指定型が多いように感じます。

果たしてユーザにとってどちらのタイプがより使いやすいのでしょうか?

ユーザは典型的にどういったシーンでエアコンのタイマー機能を利用するのでしょう?

ひとつには朝起きる時間に部屋が快適な温度になっていて欲しい、というニーズが想定できます。おそらく夜寝る前に、次の朝起きようと思っている時刻にセットしようとするでしょう。ここでもし、エアコンが時間指定型だったら、寝ようとしている今現在の時刻からその時刻までの時間を数えなければなりません。大抵の人は朝起きる時間はだいたい一定でしょうが、寝る時間がまちまちという人は少なくないでしょう。そういう人は毎晩このちょっとした計算タスクを強制させられることになってしまいます。この観点からはどうも時刻指定型の方にアドバンテージがありそうです。

もうひとつのニーズは、夜寝つくまでしばらく運転して、しばらくしたら勝手に切れてほしい、というものでしょう。この場合は、だいたい自分がぐっすり寝付くまでの時間は一定で、1時間とか2時間といった指定をしたくなるでしょう。もしエアコンが時刻指定型だったら、今の時刻に1時間ないし2時間を足した時刻を設定しなければなりません。やはりこれも毎日寝る時間がまちまちだという人にはちょっと面倒な作業です。この観点では時間指定型に軍配があがりそうです。

つまり、いわゆる「おやすみタイマー」と「おはようタイマー」では最適な設定方法が違ってしまうことになります。でも、おそらくこれがユーザが実際の現場(家庭)でエアコンを利用する際のコンテクストだと思います。是非こういう観点でリモコンを設計してみていただきたいです。>エアコン・メーカー様

また、今度エアコンを新調しようとしている方で、上記のような利用シーンにピンと来る方は、選定時にリモコンのタイマー指定方式を気にかけてみてはいかがでしょう?ちょっとメーカーは失念しましたが、まさにこのタイプ(おやすみは時間、おはようは時刻で設定)の設計になっている機種を目撃したことがあります。ユーザ・コンテクストに敏感な方達が設計しているのでしょう。こういう製品を選ぶと、毎日の就寝前の「儀式」がちょっぴり快適になるかも知れません。

2001年11月21日 補足
 道具眼プロジェクトの方で、現行モデルの実態調査をしてみました。