Page 40 of 165

632. みんなが共通してイメージする操作について考える~自動ドアの開け方


下の写真は、両方ともボタンを押すとドアが開くタイプの自動ドアです。『ボタンを押すのに“自動”ドアと呼んじゃうんですか?』という話はさておき、注目いただきたいのはボタンの押す場所です。

※自動ドア(じどうドア):扉の開閉を人力でなく電気などの動力によって行う設備のことを指すらしいです。

お店など街でよく見かけるタイプ(写真=左)。新幹線N700系の喫煙ルームを通路側から見たところ(写真=右)

左の写真はお店など街でよく見かける、出っぱっている部分が丸ごと押せるようになっているタイプです。写真のように物理的に押せるものの他に、手で触れるだけのものもありますね。「丸ごとボタン」としましょう。

一方、右の写真は新幹線N700系に設置されている喫煙ルームの自動ドアです。ドアから出っぱっている部分の、下の方にある緑色の丸いボタンを押すと自動ドアが開くようになっています。これは「丸いボタン」と呼びます。ん、ちょっとややこしいですか。「緑のボタン」に変更しましょう。話を続けます。

自動ドアが開く仕組みも同じ。ユーザが「ボタンを押す」という操作も同じです。「自動」「押して下さい」「PUSH」という文言とその並びもほぼ一緒です。

しかし、初めて「緑のボタン」の自動ドアを前にして、私は『押してください』の表示に導かれるがまま、素直に出っぱっている部分を押してしまい、何の反応もない自動ドアの前で固まってしまいました。
(しばらくその場で観察をしていたところ、やはり多くの人が出っぱっている部分に手をかけ、一回で自動ドアを開けることはできませんでした)

喫煙ルームは通路に面しているため、人がすれ違うときに肘や荷物でボタンを押してしまい、意図せず自動ドアが開いてしまう、というようなことを避けたデザインなのかもしれません。全席禁煙を謳い、喫煙車両を無くしたN700系であればなおのこと、タバコの煙には相当気を使っているのだと容易に想像がつきます。

しかし、私たちが日常的に触れることの多い、あるいは今まで“自動ドアを開ける行為”として経験してきたのは「丸ごとボタン」ではないでしょうか?

出っぱり部分も含めた「緑のボタン」の設置場所、大きさ、形状、表示文言。いずれのデザイン要素も「丸ごとボタン」の操作をユーザにイメージさせてしまいます。このうち、少なくとも1つのデザイン要素が違っているだけで、「丸ごとボタン」の操作をイメージせず、文字通り煙たがられる喫煙者でも問題なく開けられる自動ドアになるんじゃないかと思いました。

631. 思わずサクサク検索したくなる機能


不景気が続く日々。経済に疎い僕も、景気の動向が気になります。最近は、勉強も兼ねて経済関連の記事を読むようにしています。

ニュースサイト「47news(よんななニュース)」の記事を読んでいたときのことです。

「『量的緩和策』ってなんだろう?」

解らないまま記事を読み進めると内容が理解できなくなってしまいそうだったので、ちょっと検索エンジンで調べてみることにしました。
コピーしようと、「量的緩和策」をドラッグすると、選択した右下に「Wikipedia」というポップアップが現れました。
「なんだろう?」と思って、「Wikipedia」のところにカーソルを持っていくと…

左:ドラッグ箇所すぐ右下にポップアップが表示されている状態→右:ポップアップから検索サイトのリストが現れた状態

どうやらこのリストから選択したサイトで、検索できるようです。
試しに、Wikipediaを選択してみました。「きっと新しいタブかウィンドウが開いて、そこに検索結果が表示されるんだろうな」と思っていたところ、

Wikipedia検索による検索結果

キーワードに関するWikipediaの項目が、読んでいる記事のウィンドウ内に表示されました。この機能は、「popIn Rainbow」というブログパーツで実現しているそうです。

これまでWebページで知らない言葉に出会ったときは、

キーワードを選択→コピー→新しいウィンドウ(タブ)を開く→検索サイトを表示→検索ボックスにコピーしたテキストを貼り付け→検索ボタン→検索結果表示

という手順を踏んでいました。ところがこの機能では、

キーワードを選択→ポップアップしたリストから検索エンジンを選択→その場で検索結果表示

と、キーワードのコピー&ペーストやウィンドウを開くといった操作の必要がありません。知らない言葉をちょっと調べたい時など、ストレスを軽減しつつ記事にも集中できる、スムーズな情報提供の形ではないでしょうか。これなら今まで以上に、知らない言葉をサクサク検索したくなります。
とはいえ、この機能があるからといって、僕が経済通になれるかは別の話ですが…

注釈———————————————–

  • 2009年3月にリリースされたInternet Explorer 8にも類似機能があり、キーワードを選択すると「アクセラレータ」というアイコンが表示され、そこから翻訳、地図などの機能がポップアップで表示されるようです。
  • popIn RainowはInternet ExplorerとFirefoxのアドオンとしても提供されており、インストールするとこの機能を別のサイトでも利用できます。ただし、今回紹介したような動作と異なる場合があります。
  • 執筆時点において、47newsでこの機能が使用できることを確認したブラウザは、Firefox (ver.3.5)、Internet Explorer (ver.8)、Opera (ver.10)、Chrome (ver.3.0) です。(それぞれ初期状態)

630. 水温に合わせてイメージしやすい サーフボードのワックス


このあいだ、久しぶりにサーフィンに行きました。

ご存知の方も多いとは思いますが、サーフィンをするには、ボードに立ったときに足が滑らないように塗るワックスが必要です。前回ちょうど使い切ってしまったので買いに行ったところ、気が利いたパッケージのものを見つけたので紹介します。

ワックスは、温まると軟らかくなり溶けてしまったり、冷えると固まってネバリがなくなったりしてスベリ止めの効果が薄れてしまいます。そのため、水温にあわせてちょうどいい効果がでるように何種類か作られています。

今までは下の写真のワックスを使っていました。

今まで使っていたワックス

初心者のころは、夏は赤いの?冬が赤いの?で、今日は何色のがいいの?それはつまりどれくらいの硬さなの?というふうに、色と水温と硬さの対応をなかなか覚えられませんでした。ショップの店員に聞けば済む話ではありますが、シャイな私は声をかけるのをためらってしまうので、(写真のような)水温と硬さを示す小さな表記を見つけるまでは大変でした。

その日に行ったショップには、こんなワックスが並んでいました。

気が利いたワックス

このワックスのパッケージは水温が高いときに使うものが暖色、低いときに使うものは寒色になっています。しかもパッケージの横には水温の目安が大きく表記されています。

水温の目安

これなら、硬さと水温の対応を覚えていない初心者でも、「今日は27℃だから赤にしよう」と選ぶことができます。また、「前に赤いのを買ったけど、寒くなってきたから、水色のにしよう」という感じで、水温に合ったワックスをパッと見で選ぶこともできます。

「サーフショップの店員って話しかけづらいし、ワックスのことわからないし」という人にも覚えやすい、やさしいパッケージですね。私が初心者のころにもこんなワックスがあればよかったのになぁと思いました。

629. 外しやすく、繰り返し使える野菜袋のクリップ


野菜を買うと、写真1のように袋がテープでとめられていることが多いですが、皆さんはこのテープをどのようにはがしていますか?私はなかなかはがれないので、袋を包丁で破って中身を取り出していました。

ところが最近、普段は行かない八百屋でこのイライラを解消してくれる素敵なものを見つけました。

写真1:テープでとめられています

この袋は、見慣れたテープではなく、プラスチックのクリップで袋が閉じられています。店頭ではクリップの端同士が圧着されていますが、購入後、くっついている部分をぱちっと外すだけで簡単に開封できます。そして、開封が簡単なだけではなく、野菜が余ってしまったときにクリップの端と端を引っ掛けることで、袋を閉じて保存することもできます(写真2)。

写真2:クリップの使い方

開封する手間も減り、見た目も綺麗に保存できるので、購入後のことまできちんと考えられた気の利いた商品だなと思いました。

最近、このクリップの製造元である、ステープラーで有名なマックス株式会社の方にお会いする機会があったので、開発の経緯などのお話を伺いました。このクリップ(正式名称:コニクリップ)は、開発前に消費者の方のニーズを調査し、開発後もスーパーでアンケート調査を実施しているそうです。さらに、梱包する方の作業効率が上がるように色々な工夫をされたとのことでした。作業者の効率が上がれば、経営者も喜ぶように、作業者、経営者、エンドユーザーの win-win-winの関係を考慮し開発されたことを知り、脇役であるクリップにも細かい配慮をする重要性を感じました。

・マックス株式会社 コニクリップ
http://wis.max-ltd.co.jp/kikouhin/coni_story.html

628. 「100段」ってどれくらい?親切だけど、惜しい張り紙


先日、副都心線渋谷駅の地下構内でこんな張り紙を見かけました。地上出口へと続く階段の上り口の、横の壁に張ってありました。

「この階段は地上階まで約 100段あります。」とある張り紙
階段のすぐ横には、エレベータがあります。

なるほど。上をのぞいてみるとこの階段には踊り場がいくつもあり、見通しが利きません。きっとこれは、「上りはじめたはいいが思いのほか地上まで遠く、エレベータを使えばよかったと後悔する」という事態を防ぐために、親切な駅員さんが張ってくださった張り紙なのでしょう。なかなか気が利いていると思います。

しかし、この張り紙を見た私は、「約100段」がどのくらい過酷な段数なのか、具体的にイメージすることができませんでした。結局、「そう辛いものでもないだろう」と甘く見て上ってしまい、やはり途中で後悔しました。この過酷さを事前に想像できていれば、迷いなくエレベータを使ったことでしょう…。

例えば、「ビルの5階分くらい」というような表現を追加してみるのはいかがでしょう。あまり正確な表現ではありませんが、こちらの方が自宅や職場の階段を上るときのいつもの感覚と比較しやすく、「100段」と言われるよりもずっと実感しやすいと思います。

理解力に優れた受け手ばかりとは限りません。正確な情報伝達も大事ですが、場合によっては、ある程度おおまかでも想像しやすい情報の方が、かえって役に立つものです。その場に適したよりよい情報とは何か、改めて考えさせられるきっかけとなった張り紙でした。

« Older posts Newer posts »