下の写真は、両方ともボタンを押すとドアが開くタイプの自動ドアです。『ボタンを押すのに“自動”ドアと呼んじゃうんですか?』という話はさておき、注目いただきたいのはボタンの押す場所です。

※自動ドア(じどうドア):扉の開閉を人力でなく電気などの動力によって行う設備のことを指すらしいです。

お店など街でよく見かけるタイプ(写真=左)。新幹線N700系の喫煙ルームを通路側から見たところ(写真=右)

左の写真はお店など街でよく見かける、出っぱっている部分が丸ごと押せるようになっているタイプです。写真のように物理的に押せるものの他に、手で触れるだけのものもありますね。「丸ごとボタン」としましょう。

一方、右の写真は新幹線N700系に設置されている喫煙ルームの自動ドアです。ドアから出っぱっている部分の、下の方にある緑色の丸いボタンを押すと自動ドアが開くようになっています。これは「丸いボタン」と呼びます。ん、ちょっとややこしいですか。「緑のボタン」に変更しましょう。話を続けます。

自動ドアが開く仕組みも同じ。ユーザが「ボタンを押す」という操作も同じです。「自動」「押して下さい」「PUSH」という文言とその並びもほぼ一緒です。

しかし、初めて「緑のボタン」の自動ドアを前にして、私は『押してください』の表示に導かれるがまま、素直に出っぱっている部分を押してしまい、何の反応もない自動ドアの前で固まってしまいました。
(しばらくその場で観察をしていたところ、やはり多くの人が出っぱっている部分に手をかけ、一回で自動ドアを開けることはできませんでした)

喫煙ルームは通路に面しているため、人がすれ違うときに肘や荷物でボタンを押してしまい、意図せず自動ドアが開いてしまう、というようなことを避けたデザインなのかもしれません。全席禁煙を謳い、喫煙車両を無くしたN700系であればなおのこと、タバコの煙には相当気を使っているのだと容易に想像がつきます。

しかし、私たちが日常的に触れることの多い、あるいは今まで“自動ドアを開ける行為”として経験してきたのは「丸ごとボタン」ではないでしょうか?

出っぱり部分も含めた「緑のボタン」の設置場所、大きさ、形状、表示文言。いずれのデザイン要素も「丸ごとボタン」の操作をユーザにイメージさせてしまいます。このうち、少なくとも1つのデザイン要素が違っているだけで、「丸ごとボタン」の操作をイメージせず、文字通り煙たがられる喫煙者でも問題なく開けられる自動ドアになるんじゃないかと思いました。