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75. 給湯設備に見る使いやすさと安全性のトレードオフ


今回は使いやすさと安全性のトレードオフについての事例を紹介します。
 下の写真は、私の家の給湯設備のコントローラーです。左は台所にあるもの、右は浴室にあるものです。これらは連動しており、例えば、台所で電源を入れると、浴室でも電源が入りますし、浴室で湯温を変えると、台所のお湯の温度も変わります。

台所のコントローラー 浴室のコントローラー
浴室のコントローラー
台所のコントローラー

ここからが問題です。
前述の通り、台所と浴室で湯音調節が連動していることが、安全上は大きな問題になります。もし、だれかがシャワーを浴びているときに、台所で湯温を上げたらどうなるでしょうか?場合によってはやけどもしかねません。
そこで、入浴中に台所側で勝手に温度を変えられないよう、浴室のコントローラーには「設定優先」というスイッチが用意されています。これが「入」になっていると、浴室では湯温調節が出来ますが、台所では出来ません。逆に「切」だと台所でだけ湯温調節が出来ます。つまり湯温調節は常にどちらか一方でしか出来ないようになっているのです。

確かに安全になりました。これで台所のコントローラーから勝手に温度を変えられることはなくなります。しかし、ユーザビリティ上の問題が出てきました。
浴室の「設定優先」を「入」にしたままお風呂から上がってしまうと、次に台所で温度を変えようと思ったら、一旦浴室に行って「設定優先」を「切」にしなければなりません。もしくは浴室で温度を変えてしまうかです。
更に具合の悪いことに台所側のコントローラーには「設定優先」がどうなっているかの表示がないのです。湯温調節ボタンを押して、あれ?動かないな、と思っても、それが「設定優先」の問題なのか、きちんと押せていないだけなのか、区別がつけられません。

お風呂から上がるときには「設定優先」を「切」にすれば良いのだ、ということでこのような設計になっているのでしょうけど、別段風呂から上がるのに必要な操作ではないですから、実際には必ずといっていいほど「切」り忘れます。
結果として、せっかく両方にコントローラーが付いているにも関わらず、台所での湯温調節は非常に不便になっています。

これは極端な例ですが、このようなトレードオフは様々なところで見ることが出来ます。例えばコンピュータや携帯電話で何かを削除する時に出てくる「YES/NO」のダイアログも同様の例だといえるでしょう。

74. 十字ボタン式自動販売機


渋谷にある飲食店に置いてあったたばこの自動販売機です。

私がたばこを購入しようと近寄ると、先に購入しようとしていた若い女性に「これどうやって買うんですか?」と尋ねられました。

買い方は次のような手順になっているようです。

  1. お金を入れる
    →真っ暗だったスモークのディスプレイパネル内の照明が点灯し、たばこのパッケージが見えるようになる。また一番左上に陳列されたたばこの下に、LEDが点灯する。
  2. 十字ボタン(写真囲み内)でLEDを購入したいたばこのところまで、移動させる。
  3. 十字ボタン真ん中にある、四角い「購入」ボタンを押す
自動販売機写真

この女性は1を終えた後、2のところで、LEDを十字キーで移動させるというところが分からなかったらしいです。(実は私も即答できずに、あれこれ考えているうちに、先に女性の方が使い方を理解されたのですが・・・)一般的にはたばこに限らず、ジュースなどでも個別のボタンがあります。これはそれが無いために、お金を入れた途端目的とは別のたばこの部分だけにLEDが表示されてしまい、かなり不安になってしまいます。他にも特徴としては

  1. お金を入れないかぎり、たばこのパッケージはほとんど見えず、(良い意味でも、悪い意味でも)たばこの自動販売機があるということに気づかない。
  2. お金を入れないかぎり、よほど目を凝らしてみないと、何が売っているのかは暗すぎて分からない。
  3. 売り切れかどうかは、お金を入れないと表示されない
  4. 一番左上のたばこから、離れたものを買うときほど、十字ボタンを何回も押さなければ目的のたばこを選ぶことが出来ない。

などが挙げられます。

特に、b、c、dに挙げたものは、機械に慣れたからといって解決する問題でなく、この販売機を使用するたびに、不満と感じられることだと思います。

ちなみに私は使い方を理解した後だったにも関わらず、やはり、お金を投入してから欲しいたばこが売り切れであることを知りました。

73. 文章の配置と関連付けの理解


σ(^^)は秋葉原の電気街に出かける際、乗り継ぎの関係からJR秋葉原駅よりも、営団地下鉄銀座線の末広町駅をよく使います。

この駅、秋葉原の中央通りをはさんで両側に入り口があるんですが、なんとそれぞれが独立していて、地下でつながっていないのです。つまり、どちらの方面行きの電車に乗りたいかで、道路のこっち側と向こう側のどちらの入り口に入らなければいけないかが決まり、間違えたらまた地上に出て大通りを横断して反対側の入り口から入りなおす必要があるのです。

(ついでに言わせてもらうと、トイレも片方にないのは不便だ!)

で、写真は地下道への入り口です。地下への階段を半分くらい下りたところにこの表示があります。σ(^^)はよくここで、途中まで階段を下りてこの看板をジッと見上げて、クルッと振り返ってまた階段を登って行ってしまう人を見かけます。何故でしょう?

銀座・渋谷方面のりば 連絡通路はありません

この看板、

  1. 銀座・渋谷方面のりばへの連絡通路はありません
  2. 銀座・渋谷方面のりばです。反対側への連絡通路はありません

との2通りに解釈できます。

さて、正解はどちらでしょう?

以下の[ ]の中の■をマウスで右へドラッグしてみて下さい。解答があらわれます

(カラー非対応のブラウザの場合、最初から答えが見えてしまっているかも知れません。御了承下さい)。

答え:[■→ ]

72. アメリカのライターに見るフェイルセーフ


読者の方から情報を頂きました。今度はアメリカのライターの話です。

以下の写真をご覧下さい。

ライター写真1ライター写真2

これらのライターには、誤って着火してしまうことを防ぐ仕組みがそれぞれ異なった方法で取り入れられています。

左側のライターは、ローレット(ぎざぎざの回るところ)のセンター部に、ローレットよりもやや径の大きなカバーが付いており、押し込みながらでないとローレットを回すことが出来なくなっています。

また、右側のライターも、一見したところは普通のライターなのですが、このままローレットをこすっても、空回りして火花が飛びません。軸の部分に工夫(※)がしてあって、押し込むことによって軸同士がかみ合うようになっているのです。

※中心のフリントの軸は五角形の凸に、ローレットの軸は五角形の穴になっており、噛み合うことによってフリントが回るようになっている。しかし、ローレットの軸の穴の方がやや大きいため、ローレットを押し込んでフリントの軸に押しつけないと噛み合わない。

ライター写真1

皆さんご存じの様に、アメリカでは、裁判で製造者責任を問われ、巨額の賠償金の支払いを命じられることがままあります。また、法規制も相当厳しくなっています。そのため、自動車からこのようなちょっとした小物まで、日本で販売しているものと比べて、フェイルセーフがしっかりしているものが多く見受けられます。

同じメーカーの製品でも、日本で販売しているものには、このようなフェイルセーフ機構が付いていないのが一般的です。確かにコストがかかるとは思いますが、グローバルスタンダードとして取り入れて欲しいものです。

日本では規制も裁判もないからフェイルセーフもなくてもいい、ってのは如何なものでしょうか?

71. 制約~極性を間違えない工夫


写真は最近買った歯ブラシです。

歯ブラシの全体像
写真1:マイナスイオン歯ブラシ「キスユー」

イオンのパワーで歯垢を云々という解説は下記のリンクをご覧いただくとして、電池が入っているということがこの場ではポイントです。

電池チェッカーのアップ
写真2:付属の電池チェッカー(クリックで拡大)

で、電池が残っているかどうかを付属の専用チェッカーで調べるようになっています。このチェッカー、極性を正しくあてるため+極と−極の形状を変え、反対ではチェッカーが当てられないように工夫してあります。チェッカの(+)端子がU字になっていて、歯ブラシ側の(-)側の穴に物理的に入らないのです。

 制約をうまく利用した例ですね。

正しい状態
写真3:電池残量OK!
反対に当てようとした状態
写真4:反対向きでは端子が接触しない
関連ページ
マイナスイオン歯ブラシ 「キスユー」

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