カテゴリー: 公共、住宅 (page 8 of 53)

675. ドリンクバーの機械 ~押してる間だけ出るのか、短押しでいいのかわからない


読者の小澤さんから、飲食店のドリンクバー等に置いてあるサーバーが、ボタンを押している間だけ注がれるタイプと一度押せば1カップ分が注がれて自動的に止まるものとあるが、見た目でその区別がつかなくて不便に感じる、というご意見をいただきました。これはおっしゃる通りだと思います。同じ不満をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

操作部品の外観を見ただけでそれをどう扱ったら良いかわかることを我々の世界ではアフォーダンスと言います。例えばボタンは多くの場合ベースの面から少し飛び出していたりすることで、「ボタン」と書いてなくてもなんとなくここが押せそうってわかりますね。これを応用して、本来凹凸がないWebページの上のボタン画像もうまく陰影をつけて立体的に見せるといった工夫をするとそこがクリックできるんだということを“アフォード”することができます。ただこの例のような長押しか短押しかをアフォーダンスだけで誘導するのはなかなか難しいですね。ボタン数の割に機能が多いカーステレオや携帯電話では長押し操作がよく使われますが、その表示等には各社苦心されているようです。

今回小澤さんからご意見いただいたのをきっかけに改めてファミレスに行って詳しく観察して来ました。ここには2台のサーバーが設置してあり、左のものはホットドリンク用、右がコールドドリンク用です。ホットドリンク用は「1度押せばカップ1杯分が出てくる」タイプ。コールドの方が「押している間だけ出る」タイプでした。おそらくそれぞれ理にかなっているのでしょう。ホットドリンクのいくつかはボタンを押してからオンデマンドで内部で必要量だけ準備をしたりして少し時間がかかるし、逆に作ってしまった分は出してしまわないと困ったことになりそうです。コールドに関しては濃縮原料を水と一定比率で混ぜるだけなのでいつでも止めることができます。個人的には短押しで済んだ方が楽ですが、ドリンクバーの醍醐味はブレンドにあるという人もいらっしゃるので(笑)。 (すべてのお店の機械がこういう区分けかどうかは確証がありません。事情をご存じの方がいたら是非ご一報下さいませ。)

短押しで一杯分出るタイプの例 押している間だけ出るタイプの例

さて、ではそれが見た目で区別しているかというと、、、ないですね。ホット用の方は(ちょっと写真切れちゃってますが)後付けっぽいラベルで説明が書いてあります。コールドの方はボタンを押している間、一応そのボタン自体が点滅するようになっていて、若干「押し続けないとダメかな?」という気にはさせられました。

「押せばすぐわかる」上に「外してもダメージは少ない」という観点でいえばさして致命的な問題ではないんですが、それでも誰か上手いデザインを考案してくれないかなぁとは思ってしまいますね。>ボタンの長押しアフォーダンス

P.S.

むしろこれにイラっとできる人はユーザビリティ評価の仕事向いてると思います(笑)。

追記

昨日また別のファミレスに行って違うタイプを撮ってきました。こちらも押している間だけ出るタイプで、ボタン部分に明示的に説明が書かれていました。

押している間だけ出るタイプの例(2)

665. 利用者証を二度出さなければならないプール


写真1. 利用者カード 写真2. 改札ゲート

写真1は最近ちょくちょく泳ぎに通いはじめた横浜国際プールの利用券です。このプールは会員登録不要で、自販機でこのようなカードを購入し、写真2のような無人改札ゲートを通って更衣室へと向かいます。

写真3. 更衣室のロッカー 写真4. 扉裏のカードスロット

写真3は更衣室のロッカーです。空いてるロッカーには写真のようにリストバンド付きの鍵がついており、プール試用中はこれを腕につけておくようになっています。しかし空いてるロッカーに荷物を入れて鍵をかけようとしても廻りません。何故なら、写真4のように扉の裏にカードスロットがついており、先ほどの利用券を挿さないとロッカーが使えない仕組みなのです。利用者としての認証は改札ゲートで既に済ませているのに、どうしてここでまた利用券(=利用権)を示さなければロッカーを使えないのでしょう?

これが地味に不便なんです。σ(^^)はプリペイドカードを使っているので、改札前で財布から取りだして改札を通します。その後つい電車などのクセでカードを財布に戻してしまいます。その後、着替えて荷物を全てロッカーに押し込んで、さぁ鍵をかけるかって段でカードが必要であることを思い出し、再度荷物を全部出して財布を取り出すことになります(たいてい財布の入ったズボンは真っ先に入れるので一番奥に…)。帰りは逆に全ての荷物を持って改札まで行き、そこで初めてカードがロッカーの扉の裏に置き去りであることに気付き更衣室まで戻るはめになったことが何度も。扉の裏という目に付きづらいところにスロットがあるので、意識に昇りづらいんですよね。

先の疑問に戻りますが、あれこれ考えて思いつくのは「一人でいくつものロッカーを占有するのを防止するため?」位です。そんな人いるんでしょうか?いるのかも知れません。もしかしたらいるかも知れない。いたら大変だ。そんな発想でこのシステムがデザインされたのかも知れません。結果として少なくともσ(^^)が目にした範囲では当プールのロッカールームは多少そんな輩がいても平気なくらい余裕があります。それでもハードウェアとしてこういう作り込みをしてしまったので今更止めることもできないのかも知れません。

世の中にはこうした、一握りの利用者の“ずる”を防ぐ為に、他の大多数の利用者が日々不便を強いられて続ける結果となっているシステム設計が多い様に思います(デジタル放送や音楽ダウンロードサービスの著作権保護システムなど)。システムを設計する際には、サービスを提供する側が提示する「これだけは絶対許さない」という条件を満たすことばかり優先してしまいがちですが、利用者視点でそれがどういう意味を持つかも常に念頭においておきたいものです。 

2010.10.30追記:

匿名の方から、こうなってる理由がロッカーの鍵をもってゲートを出て、合い鍵を作れないようにする為であるとご指摘をいただきました。なるほど。それでも結局抜け道はあるということもご教示いただいてますが、ここには書かないでおきます(^^;)。結局のところ犯罪者がちょっと本気を出せば敗れる程度のセキュリティで、無辜の大多数の利用者が常に不便を強いられる点も著作権保護システムなどと同じなんですね。

ちなみにここのロッカーの鍵はディンプル錠になってるので、複製はそれなりに難しいはずです(σ(^^)の知識が古くなければですが…)。

664. いきなり落ちないブレーカー熱望


忙しい朝。キッチンではお母さんがレンジでおかずを温めながら、トースターでパンを焼いています。洗面所ではお姉さんがドライヤーで髪を乾かし中。そこえ起きてきたお父さんが「今朝は冷えるな」とかいいながらエアコンの暖房をオンした瞬間…

バチンッ!

一斉に家中の電気が切れ、2Fのパソコンで今日提出のレポートを仕上げていた弟の悲鳴が聞こえる…

みたいな事、誰でも一度は経験したことがあるんじゃないでしょうか?そう、ブレーカーです。「なんか時々こいつのせいで電気が切れるけど、なぜなのかよく知らない」という人の為に簡単に説明しましょう。
 

一般的な配電盤の写真

ブレーカーが電気を遮断する場面は大きく3つあります。

  1. 家庭毎にあらかじめ契約した一度に使える電流量を超えて電気を使おうとした時
  2. 宅内の部屋毎の電気配線が耐えられる以上の電気を流そうとした時
  3. 漏電が起きた時 

です。1つ目の場合、写真の緑のアンペアブレーカー(契約アンペア数で色が違います)が動作し、家中の全ての電気が遮断されます。2つ目の場合は、奥の方に見えるたくさん並んだ「負荷ブレーカー」のうち該当するものが動作し、特定の部屋だけ電気が切れます。3つ目の場合にはまた別のブレーカーが動作します(写真には写っていません)。1つ目のケースは契約アンペア数を上げれば解決しますが、電気料金の基本料が上がったり、賃貸住宅の場合家主の許可が必要だったりします。2つ目は壁の中の配線の制約なのでかなり大がかりな対策が必要になります。3つ目は完全にトラブルなのですぐに電気工事屋さんに診てもらう必要があります。

2010.10.27修正:ブレーカーの説明についてご指摘いただきましたので表記を修正しました。

さて、この「家中を停電させて使いすぎを警告する」という手段。一昔前の扇風機や冷蔵庫が主だった頃にデザインされたんだと思いますが、デジタル機器が増えた昨今ではタイミングによっては大きな被害につながります。パソコンやハードディスクレコーダー等ではタイミングが悪ければ大切なデータを消失してしまうかも知れません。DVDメディアやプリンタ用紙などを無駄にしてしまうこともあります。

このデジタル家電の時代、アンペアブレーカーももう少しユーザに歩み寄ってくれてもいいんじゃないでしょうか。いきなり警告無しにブチっと切れるんじゃなくて、直前に「もうそろそろマズいです」って一言知らせてくれてもいいと思うんです。そうすればユーザも湯沸かしだけ後回しにするとかいくらでも対処ができ、トラブルを未然に防げるはずです。

昨今スマートグリッドという技術が注目されて実証実験が行われています。太陽光パネルなどの自家発電装置と電力会社からの電気を賢く使い分けて、場合によっては売電したりもする賢い(=スマート)電力ネットワークシステムのことですが、家庭内の端末には使用電力量をリアルタイムに表示できるものもあります。こうしたものであればその数値に応じて注意を促したりも簡単にできるのかも知れません。

できればそこまで待たなくても一般家庭にすぐに設置可能な”スマート配電盤”をどこか開発してくれないですかね…

2010.10.25 補足:

複数の方からブレーカーは安全のためについてるので遮断を遅延させるなどもってのほか、というコメントをいただきました。もちろんご指摘の通りで、本記事の主旨は、それに先だって何か別の手段、装置でお知らせしてくれたらいいんじゃないか、というものでした。誤解を招く表現だったことをお詫びいたします。

そして!すでにありますよ、というご連絡も匿名の方からいただきました!以前検索した時は見つけられなかったですが、やはりありましたか。そもそも普通の分電盤がいくらくらいするかわかりませんが、結構なお値段ですね。σ(^^)は賃貸住まいなので今ついているものを勝手に交換するワケにはいきませんが、是非今後建てられる新築物件には普及して欲しいですね。

660. 人混みでもスムーズ!球場の混まないゴミ箱


これは、初めて札幌ドームへ野球観戦に行った時のことです。

試合終了後、人混みの中を球場の出口へ向かって歩いていました。飲みきれなかったジュースを片手に、この混雑だとゴミを捨てるのも大変だろうと少し憂鬱な気分になりました。ですが、いざゴミ捨て場に着くと人の流れは思いのほかスムーズで、すんなり捨てることができました。

札幌ドームのゴミ箱

何でスムーズに捨てることが出来たのかな?と周りを観察してみると、ポイントは“人の流れに合わせたゴミ箱の配置”だと気づきました(図参照)。液体用の「飲み残し」のゴミ箱を中央に配置し、その隣から、「紙カップ」「紙トレイ」、最後にはその他のゴミに分類される「一般ゴミ」という順で左右対称に並べられています。さらに、端の「一般ゴミ」の先は球場の出口です。この配置のおかげで、混雑していても、人の流れに逆らわずに、ゴミを捨てながら出口へ進むことができるのです。

図.ゴミ箱の並び方と人の流れ

球場など一度の利用客数が多い施設では、人の導線も、お客さんが快適に利用するための重要な要素です。その中で「ゴミ箱の並び方」で人の流れをスムーズにしながら、しっかりとゴミの分別まで行なわせる札幌ドームの気配りに関心しました。

657. 高額請求にビックリ!?~不親切な明細書~


最近、イー・モバイルのデータ通信サービスに加入しました。専用携帯端末を使って、外出先からでもインターネットに接続できるサービスです。データ通信料が定額なので、いくら使っても一定額を支払うだけで安心だと思い、快適なインターネット生活を送っていました。しかし、専用Webサイトで請求金額を照会できるため、少し不安だったので確認してみました。

すると…

請求情報の照会画面

「な、な、なぁなぁじゅうまんいぇん!!!???」

ビックリしました。焦りました。このまま何ヶ月間、私はプロバイダにお金を返済する為だけに働かなければならないのかと、真剣に悩みました。画面を丹念に探しても、定額サービスの金額は一向に見つかりません。

しかし、よくよく画面を見ると、

ただし書き

注意書きがありました。この注意書きをよく読むと、実はこの金額、単純に通信の量(パケット数)に応じて一律に計算された金額だったのです。つまり、定額サービスに入っている私にとって、実際に請求される金額ではなかったのです。請求情報画面を閲覧する殆どのユーザは、支払わなければならない金額を確認する意図のもと、この画面を開いていると考えられます。しかも、サービスを導入した初期に「本当に定額なのかな?」「ちゃんと定額になっているのかな?」という不安を抱きながら訪れるユーザの可能性が高いと考えられます。「金額を確認する」という明確な意図を持ったユーザにとって、ページ上部に配置され赤字で注意書きが記載されていても、先に金額がある場所へ意識が向いてしまいます。そのようなユーザにとって、しっかりと実際に請求される金額を表記しなければ、不親切になってしまいます。

同じような経験をしたユーザが多かったのでしょう、この日記執筆するにあたり再度このサイトを訪れたところ、請求される金額がしっかり記載されていました!ちゃんとユーザの気持ちを反映して、設計を改善する姿勢は共感しました。

現在の画面

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