カテゴリー: 公共、住宅 (page 21 of 53)

456. レイアウトを変えてみると~地下通路の案内表示~


下の写真は東西線大手町駅とJR東京駅、丸ノ内線東京駅とを結ぶ地下通路にある案内表示です。四角形の内側と外側の両面に案内が表示されていますが、私は初めてお目にかかりました。面白そうなのでちょっと分析してみようと思います。

地下通路の案内表示1
地下通路の案内表示2

案内板の手前(外側)には、このまま直進した所にある施設、またはいずれ右左折するけれども今はこのまま直進すればよい施設が表示され、奥には(内側)ここで曲がると辿り着く施設が表示されています。この情報の切り分け方は従来からあるような、直進、右、左の案内を横長の案内板に並べて表示したもの(横長タイプ)や物理的な方向に対して忠実に表示したもの(十字タイプ)などと変わりません。

ただ、横長タイプは横方向にスペースがあまりない通路では使いづらく、十字タイプは自分の進行方向の案内が見えないため回り込む必要があったり、直進用の別表示が設置されているなどしてデザインとして洗練されていません。

しかし、今回取り上げた四角形タイプの案内板は、直進と左右の案内を前後の2段配置にすることでこれらの問題を一挙に解決しているのです。しかも、情報の切り分け方は従来通りであるため、ユーザを混乱させることはありません。さらに、奥(内側)の左右方向の案内は少し離れた所では隠れ、曲がるべき十字路に近づくと見えるようになっていて、情報整理の効果もあるように思います。そして何より、見た目のデザインがシンプルで丸の内のお洒落な雰囲気にピッタリの素敵な案内表示だと思います。Yes!シンプルビューティー! 

454. ICカードチャージ専用機


写真1は、最近、駅構内によく見かけるICカードチャージ専用機になります。


写真1 ICカードチャージ専用機 このようにカードを差し込む

このチャージ機の大きな特徴は、カードのデータを読み書きする際、従来の自動券売機と異なり、写真のように、差込口に差し込む方式になっていることです。

実際に使ってみて気になったのは、カードを差し込んで手続きが終わった後、いつカードを取り出せるか分かりにくいことです。

従来の自動券売機は、カードが機械に吸い込まれて見えなくなるため、

  • 「カードが見える」=「カードが取り出せる」
  • 「カードが見えない」=「カードが取り出せない」

というシンプルで分かりやすいルールが成立しており、このような問題はおきませんでした。

それに対し、このチャージ機は、カードが取り出せる時もそうでない時も、カードが常に「見える」状態であるため、上記のような分かりやすいルールがそもそもないわけです。では、代わりに何か「いつ取り出せばいいのか」を教えてくれるルールはあるのでしょうか?確かに写真2、3のような緑の三角のランプがあり、取り出せるタイミングになると点灯から点滅に変化することで、取り出せるタイミングを教えてはくれています。しかし、点滅になったら取り出せるというルールがどこにも記されていないので、結局のところ、点滅するまでは「いつ取り出せるんだ?」とジリジリと待つことになってしまいます。この状態で待ちきれずにカードを取り出そうとすると、写真2のようなロックに阻まれ、今度はカードをつかんで「取り出せないなあ」とガチャガチャさせるばかり。カードが取り出せない時は、このスライド式の赤いバーでカードがロックされる仕組みになっていますが、チャージ機を操作するときの視線の角度からだとバーの見える範囲が狭いため、ロックがかかっているのか外れているのか確認しにくい状態になっているわけです。 

写真2 カードが取り出せない状態 写真3 カードが取り出せる状態

結局、いつ、どうやってカードが取り出せるのか、事前に情報提示がないため、ユーザにとってもどかしく感じてしまうシステムになってしまっています。

「見える」ということは、わかりやすくなったり安心感があったりと、ポジティブな印象があります。しかし、ただ「見せた」だけでは、今回の事例のように、使いづらくなってしまうことがあるのですね。 

452. 表示ルールの一貫性 ~工事中の簡易案内板


新横浜駅は、最近再整備工事がひと段落し、構内がとてもきれいになりました。しかし少し前までは、工事中のために簡易案内板がいたるところに取り付けてありました。

工事中の新横浜駅

ある日予定していた新幹線に乗り遅れそうなので、構内を急ぎ足で移動していました。工事が始まってから様子がだいぶ変わったなぁと思いつつ、案内板を横目に改札口への足を速めたのですが、ふと気がつくと、なぜか私は地下鉄の改札口の前に…。どうやら案内を読み違えていたようです。

当時取り付けられていた案内板は、右方向へ誘導する場合は名称の表示に対して矢印を「右側配置」、左側に誘導する場合は名称の表示に対して矢印を「左側配置」としてあるものがほとんどでした。 

一般的な案内板

私が読み違えた案内板は、階段の踊り場にありました。この案内板だけは名称の進行方向側に矢印をつけるというルールに従っておらず、どちらの方向に誘導する場合も矢印が「右側配置」になっていたのです。

私が読み違えた案内板

焦っていた私は、無意識のうちに「矢印の示す方向」ではなく、「矢印が名称のどちらについているか」で、向かうべき方向を判断していました。

この日は息を切らしながら、新幹線に乗り込むことになってしまいました。工事が終わった後は、このような失敗をすることなく新幹線を利用できていますが、こんな私のために、工事中であっても一貫性のある簡易案内板を使って欲しいと思いました。

451. 水栓


あるトイレで手を洗おうとしたときのことです。

上の写真の水栓のハンドル(○で囲まれた部分)をひねって水を出そうとしましたが、出てきません。なぜだろうと思ってよく見てみると、実はこの水栓は、手をかざせば自動的に水が出てくるタイプのもので、先程ひねったハンドルは、温度調節のためのものでした。
私が思い浮かべてしまった“ハンドルをひねれば水が出る”という操作イメージは、私に限らず多くの人が持っているのではないでしょうか?

このような操作イメージは、一旦頭の中に出来上がってしまうと、なかなか崩しにくいものです。同じ公衆トイレの洗面周りという場所で、操作イメージと実際の機能との違いによって戸惑ってしまう問題をかかえた事例は、他にも見受けられます(※)。
新しい製品を開発する際には、このような点についても配慮する必要があり、私たちモノづくりに関わる者を常に悩ませ続けています。

※使いやすさ日記 「187. いくら回しても水が出ない蛇口」 参照
http://usability.ueyesdesign.co.jp/diary/187.html 

450. 開かずの扉 ~トイレの個室


オフィスのトイレ

私達の働くオフィスのトイレです。ここのトイレには個室がいくつかあるのですが、その中に一つだけ、いつも扉が閉まっているところがあります。

最初は「誰かが入っているのかな~?」と思っていたのですが、いつ利用してもずっと閉まったままの扉が不気味なので、勇気を振り絞って確認してみました。 

開かずの扉の中

別に利用中でもなんでもありません。ここにも、もう一つ個室があるだけでした。

ただこの個室は他と違って、スペースが広い、手すりがついている、扉が外開き、など体の不自由な方に快適に利用してもらうための工夫が見られます。扉が外開きであれば、緊急事態が発生して外部から扉を開けなければならない状況になったときに、中に人がいても開くことができます。

私がこの個室を利用できないものと考えたのは、

  • 開いている扉  = 利用可
  • 閉まっている扉 = 利用不可

と思い込んでいたためです。せっかくこの個室は使いやすくするための工夫がされているのに、外開きの扉のために利用できることが伝わらないのは残念です。

本当に必要としている人にこのような個室があることをアピールするためにも、使いやすくするための工夫だけではなく、使ってもらうための工夫をすることも重要だと思いました。 

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