カテゴリー: 公共、住宅 (page 13 of 53)

607. これがあれば見える―飛行機内の頭上荷物入れの凸面鏡


私は、仕事柄中国出張が多く、帰りに空港でいつもお土産を買って帰ります。あちこちのお店で買物をするので、袋がいくつあるのかはっきりと覚えていないことがあります。 着陸後、早く降りたい気持ちに負けてしまい、荷物入れの奥まで入念に確認せず、お土産の袋を取り忘れて、悔しい思いを何度かしました…このような置き忘れの失敗は私だけでしょうか?

再び中国出張に行き、中国東方航空の飛行機(機種はエアバスA340)で移動したとき、着陸して頭上の荷物入れから荷物を出そうとすると、天井部に丸い形の鏡があることに気がつきました。なるほど、この鏡を見れば、荷物入れの中に何があるのか一目でわかりますね。

頭上荷物入れの天井に凸面鏡が付いている
鏡に荷物入れの中身が映っている

この鏡のおかげで、急ぎたいとき、一生懸命小ジャンプで荷物入れの中を覗き込むこともなく、奥の部分に荷物が残っていても取り忘れる心配がありません。そのうえ、乗客だけでなく、客室乗務員にとっても、荷物の置き忘れの確認が楽に確実にできるのもメリットですよね。 鏡1つを設けるだけのちょっとした工夫ですが、とても親切だと思いました。

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鏡の応用事例の日記は、他にもあります。

使いやすさ日記 『226. お釣りが見える自動精算機
 

605. グラフィックの表現で分かりやすくなった?!~コインパーキングの精算機~


デザインに関わる仕事をしている私が、ちょっと考えさせられるコインパーキングの精算機を見付けました。
この精算機の操作パネルには、なにやら線が引いてあったり、車のシルエットが描かれていたりしています。仕事柄、どうしてこのような表現になっているのか、とても気になりました。

精算機正面の操作パネル(クリックで拡大)

操作パネルの左側は、精算手順が上から順番に書かれていて、項目によって番号や色を変えたり、出庫の説明に車のシルエットを使ったりと、グラフィックの表現による工夫を感じました。これは分かりやすい!と思ったのですが、続いて操作パネルの右側を見てみると、問題に気が付きました。それは、操作パネルの右側の表示やボタンのレイアウトが、操作手順と大きくズレてしまっているところです。これでは、精算を終えるのにどこを見て、どのボタンを押していけばよいか、迷ってしまうでしょう。精算手順とボタン位置を結ぶ線は、分かりやすくしようとした結果でしょうが、それがかえって煩雑な印象を与え、一見して分かりにくいものにしてしまっています。そこに、悪戦苦闘しながらデザインしている様が目に浮かび、「グラフィックの表現だけでは、これ以上使いやすくなりません!」という声が、聞こえてきそうです。グラフィックの表現のみで、使いやすくできる限度があることを見せられたような、そんな気持ちになりました。

今回の場合、機構を設計する際に、生産性とかコストとかの制限から、ボタンや表示のレイアウトが決定された事が想像されます。しかし、もっと利用者が使いやすい製品にするには、機械内部の構造を決める段階で、ユーザ視点を取り入れた設計が必要になってくるのではないでしょうか。それでも、この操作パネルのように少しでも使いやすくしようとする工夫は大切ですので、私自身もその気持ちを欠かさないように心がけていきたいと思いました。

604. 後方のドライバーにドアの開放を伝える~タクシーのドア照明~


最近、ドアに青色のLED照明がついているタクシーに乗りました。
運転手さんに話を聞くと、お客さんの乗降時に後方から来た自転車やバイクなどが接触する事故を防止するためとのことでした。

タクシーのドアのLED照明

通常、ドアを開けると足元を照らすカーテシランプが点灯しますが、ドア下部に設置され、しかもそれほど明るくないため、後方からの視認性はよくありません。そこで青色のLED照明をドアの周囲に装着し、視認性を向上させたという訳です。

これなら、後方から来る自転車やバイクのドライバーの目に入りますね。ドアの開閉状態や開き具合がわかりやすくなって、接触事故の防止につながると思います。LEDなので、夜間だけではなく昼間も視認性が高いという点も見逃せません。

このドア照明を他の車に装着しても有効なのでは?と思い調べてみると、スライドドアの車に装着するタイプがありました。
後方のドライバーから見ると、スライドドアはドアを開けてもドア自体が外側へ飛び出ず、見た目にあまり変化がないため、ドアの開放がわかりにくいです。ワンボックスの2列目に乗車している子供が、右側のスライドドアから降りたときに後方車両と接触してしまう、そんな事故の防止に役立ちますね。

後方のドライバーにドアの開放を明確に伝えるLEDのドア照明、より多くの車に普及して欲しいと思います。 

599. 上に移動はできません。両側「降り」のエスカレータ の巻


こんにちは。土曜の夜は映画を観に行くのが好きなササキです。先日、レイトショーの映画を見ようと、近所にある「ららぽーと横浜」に行ってきました。

上映時間よりも早めに到着し、ショッピングフロアを見て廻っていたのですが、ふと、吹き抜けに設置されているエスカレータの動きに違和感を覚えました。
先ほど、フロアに上がる際に使用したはずのエスカレータが、2基とも「降り」になっていたのです。 

写真1:両側が降りのエスカレータ

最初は、「あれ?どういうことだろう」と思ったのですが、「もうこのフロアから出なくてはいけないのだ」ということに気がつき乗り場に近づいてみると、このフロアの営業時間は終了した旨を伝える看板が立っていました。

ららぽーと横浜のような複合施設では、映画館やレストランなど、業種により閉店時間が異なるため、各フロアの営業終了時刻になるとエスカレータの片側を停止させているのをよくみかけますが、最近は、使いやすさ日記の「529. 矢印の方向へ進め!エスカレータの方向表示灯」にて取り上げられているような、一定時間使用されていないと運転が停止するエスカレータも広く普及しているため、動きが停止しているだけではアクセスそのものが制限されているのが十分に伝わらずに、乗り場の入り口まできてしまうということも考えられます。

その点、両側が同じ方向に動いていれば、遠目からでも上のフロアには行けないということは明確ですし、2基のエスカレータを1方向の動きとすることで、閉館エリアからは多くの人数を一度に移動させ、逆方向からのアクセスも制限することができるので、なかなか理にかなった方法だなあと感心しました。

※後日、動きが切替る瞬間が気になり、エスカレータ付近でフロア終了の時刻を待っていたのですが、警備員2名が上下の入り口を封鎖し、手動で切り替えていました。慎重に人の手で作業を行うことで、安全性を十分に確保しているのですね。安心しました。

588. そろそろプッシュだ!~落下の前にお知らせしてくれる吸盤~


収納が少ない我が家のキッチンでは吸盤つきのフックをよく使っています。壁を傷つけず、平滑な壁面であれば簡単に設置ができるので、とても重宝しています。しかし、ひとつ困っていたことがありました。それは、いつの間にか吸盤が壁から剥がれてしまい、掛けていた調理器具が落っこちてしまうことです。そのため、できるだけ軽く、壊れにくい物を選ばなければならず、フックに掛ける物が限定されていました。

そんなある日、こんな商品を見つけました。一見普通の吸盤つきのフックと変わらないのですが、ポイントはこの赤いライン。

フック外観

真ん中の突起をプッシュして吸盤を壁につけてみると・・・

吸盤を押して赤いラインが消えた状態

赤いラインが隠れて見えなくなりました。実はこの赤いライン、吸盤が浮いてくると現れ、「もうすぐ落っこちてしまうよ」という注意情報を発信しているのです!

フック断面図 左:吸盤をつける前 右:吸盤をつけた状態

仕組みは、上図のように吸盤とケースが独立して動く構造です。吸盤は少し(この商品は3~4ミリ位)浮いただけで落下してしまいます。しかも時間をかけて徐々に浮いてきます。そのため、よほど注意していない限りその変化に気がつきません。いつの間にか落下するのは、本当は落ちそうな状態であるにもかかわらず見過ごしているからなのです。しかしこの吸盤は、徐々に浮いてくる現象を逆にうまく利用して、今まで見えなかった吸盤の状態を「可視化」して認知させている、よく考えられている商品だなと感心しました。

今では、赤いラインが現れたらすぐにPUSHする習慣がついたので、ちょっと重い調理器具でも気兼ねなく掛けられるようになりました。

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