カテゴリー: その他 (page 29 of 30)

49. トイレの水栓


当社ではオフィスが9Fと10Fの2フロアに分れていて、男性用トイレはそれぞれに1つづつ有ります。

そのトイレの水栓は、それぞれ下記の写真の様なものがついています。9F(図1)は自動で水がでるタイプ、10F(図2)は自分で水栓をひねる〔手動)タイプのものです。私は9Fで仕事をしているので、ほとんどは9Fのトイレを利用するのですが、ごくたまに10Fのトイレを利用することが有ります。

自動型 手動型
図1:自動型 図2:手動型

ここまで書けば皆さんお気づきの方も多いと思いますが、そう10Fで用をたして手を洗うときに、水栓の下に手を添えて水が出るのを待ってしまうことが有るのです。

その理由をいろいろ考えてみると

  1. 環境から受ける影響
  2. 形態から受ける影響

の大きく2つが思いつきます。

例えば1で言えば、キッチンではそんなことを(少なくとも私は)したことが無いのです。また2で言えば明らかに水栓本体が細かったり、つまみが見て取れる形態(図3:後日掲載)の水栓でも同様です。

具体的に書くと

1.は『概ね9Fのトイレを利用する頻度から、オフィスのトイレという環境で、「自動で水が出る」ということを無意識に思い込んでしまっている』

2.は、9F及びその他の公共トイレなどで利用した経験から、『太くてニョッキっと首を出した(水栓が一見して認められない)ような形態の場合、「自動で水が出る」というアフォーダンスとして認知されている』

というようなことです。

これは、いろいろな作法が混在している世の中で、通常接している作法と異なるものに遭遇したとき、人間に思わぬ負荷がかかっている例とも言えます。

今回のような自分で人知れず苦笑いして終わるような些細なことから、もっと重大なことまで、また何か有ればご報告しようと思います。

43. 無言の拒絶


無言の拒絶

写真は言わずと知れたケンタッキーのカーネル・サンダースおじさんであります。でもちょっとヘンですね。通りから背を向けています。

そうこの写真はまだ開店前の準備中に撮影したものなんです。つまりまだお店はやってないよ、ということをサンダースおじさんの背中が語っているわけですね。

同時にイーゼルに置かれたメニューが入口の真正面に置かれて制約となっています。

なかなか見事だと思いませんか?

34. 電子白板のコピーの取り方


打ち合わせによく使う電子白板ですが、時々困るのがコピーをとる時。

先日のある会議で電子白板を使い、さてコピーをしようと思いボタンを見ると???

電子白板の操作パネル

この電子白板でコピーをとるには、左側の「1」と書かれたボタンと右側の「5」と書かれたボタンの「どちらかを押す」というのはわかったのですが、「5」の意味とボタンのR形状(左右の端が丸くなっている)によるボタンが示す方向性がよく分からず、いつも使い慣れている人に聞くと・・左方向にアームを動かしてコピーする時は「1」を、右方向にアームを動かしてコピーする時は「5」を押す・・と。アームはコピーすると片方に止まり、次のコピー時は反対方向へ動く・・ので、その説明では?です。他の方に確認すると1部と5部コピーをとる時に使い分ける・・そうです。

「1部」と「5部」に限定された枚数の根拠がわからないのと、ボタン形状のRはコピーの方向性を示し、コピーする方向によって使い分けるというユーザーモデルを作ってしまったのが戸惑う原因のようです。

いっそ、ボタンは「1」のみにして、四角いボタンのほうがわかりやすく戸惑うこともないと思うのですが・・。誰も使ってないらしい「5」のボタンが、わかりやすいデザインの方向性を指し示しているようですね。

28. 東海大付属病院の医療事故


先日、読者の方から以下のようなメールを頂きました。

また、悲しい医療事故が発生しましたが、“ミス”で終結しない事を切に願います。

航空機事故を中心に、これまでの日本の調査スタンスでは、ほとんどが、人間のミスとして処理されてしまい、そのミスを発生させた要因の追及がおざなりになる事が多いです。

今回の医療事故も、“看護婦にこれから注意させる”“色分けする”など安易な方法に落ち着くんでしょうが、根本の原因は“注入できる構造”にあるのだと気づいて欲しいと思います。

血管系と内服系のパイプの径を代えるとか、凹凸をつけておくとか、物理的に接続できないようにするべきと思います。

極論すれば、これを予測できなかったメーカ、医療機関、ひいては規格団体の責任であって、“ユーザー”である看護婦さんの責任にして欲しくないと切に願います。

まさにその通りだと思います。この方もユーザビリティの研究をされている方で、「ユーザビリティで救えたかもしれない」ことを痛切に感じていらっしゃるのだと思います。

今年に入って、同様の医療事故が相次いでいます。そのどれもが「単純なミス」です。

しかし、人は必ず「単純なミス」を犯します。どんなに注意していても、それが人の注意力に依存していれば、「必ず大丈夫」だとは決していえません。

では、ユーザビリティ上の配慮があれば「必ず大丈夫」かと問われれば、そうではないでしょう。しかし、ユーザの判断を、パイプの形状などによって、ユーザの外部に委ねることによって、「単純なミス」をする確率は確実に減らせるでしょう。

今回のことが契機となった委員会では、ユーザビリティ上の検討もされているようです。是非、検討だけで終わらせないで欲しいと思います。

関連ページ
使いやすさ日記/『82. 航空管制のニアミスについて』

23. 論理的インタフェース設計の落とし穴


皆さん、毎日トイレに行きますよね。私ももちろん行きます。会社でも何度も行きます。

当社では、トイレの電気は省エネのために出る度に消しています。そして、入る度に点けます。そう、私はトイレに入ると、まず電気を点けるのです。もうこれは習慣ですね。

しかし、果たして私は本当に「電気を点けて」いるのでしょうか?

たまに、トイレの電気が点けっぱなしの時があります。お客さんが消し忘れでもしたのでしょう。

そういったときにトイレに入ると、「あ、点けっぱなしだ」と思いながら、私は電気を消してしまいます。そうです、今から自分がトイレを使うのに、わざわざ点いている電気を消してしまうのです。そして、いつもと様子が違うことにしばし動転し、それから改めて電気を点けます。

つまり、私は日頃トイレに入るときには、「電気を点けて」いるのではなく、実際には「スイッチを今と反対側に倒し」ているのです。

毎日うまくいっているために、いつの間にか「電気を点ける」という本来の目的は「スイッチを今と反対側に倒す」ということにすり替わってしまったのです。そして、私は「電気を点けて」いるんだと思いこんでいますが、習慣になっているのは「スイッチを今と反対側に倒す」というもっと単純なことだったのです。

しかし、私に『トイレに入ったらまず何をする?』と聞くと、『そりゃぁ電気を点けるよ。なぜなら暗いからね』と答えるでしょう。それは決して自分が「電気が点いているかいないかに関わらず、ただ単純にスイッチを倒すことしかしない頭の悪いやつ」と思われたくないからではなく、本当に「電気を点ける」と思いこんでいるのです。

人間は外界の制約を巧く利用し、様々なことに適応していきます。人間にはアフォーダンスを上手く利用する能力が備わっているのです。

ユーザはこのように優れた適応能力を持っていますが、必ずしも自分のことを正しくは理解していません。自分の行動を反射的なものだとは考えずに、自分にとって筋の通った論理的なメンタルモデルを構築しようとします。

それ故に、設計者やデザイナーが論理でインタフェースを設計すると、このようなときに破綻してしまいます。『決して理詰めで物事を考えるわけではないユーザ』のことを十分に考慮した柔軟性、冗長性(たとえばフェールセーフをしっかりと組み込む)を持ったデザインを行うべきなのではないでしょうか。

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