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30. 信号待ち~より良いインジケータの提案


最近(といっても随分前からありますが)歩行者用の信号に、青になるまでの時間を表示するインジケータが併設されている信号機が増えてきました。

確かにこれは良くできたフィードバックで、有ると無いとでは信号を待つときの気持ちが随分違います。

設置に至った経緯は知りませんが、やはり信号無視を減らす為なのでしょうね。

でも、青信号までのインジケータが残り少なくなってくると、あと2メモリ、1メモリが、やっぱりイライラしてしまいます。

私がイライラするのは、人間の感覚が対数的であることに原因があると考えられます。1から1増えると2となり、その差はとても大きい(倍!)ですが、同じ1の増加ですけど、10,000から10,001になっても、これはたいした違いではありません。(ウェーバー・フェヒナーの法則)

信号の場合には逆に少なくなって行くわけですが、やはり、残り時間が10から9になるのと、2から1になるのとでは、人間の感じ方が違うわけです。

しかし残念ながら、せっかくのインジケータも、そこまで考慮したデザインにはなっていません。

そこで考えてみました。

このようなインジケータはどうでしょうか。


信号が青信号になるまで

青に近づくと、人間の感覚に合わせてフィードバックの更新頻度が高まります。また、青になるまでの待ち時間のより詳しいフィードバックも得られます。

どうですか?

29. 電車の扇風機~時代錯誤?


写真は東急新玉川線~田園都市線を走る列車の天井にとりつけられた扇風機です。平気で人間の指が入るようなガードなんですけど…


電車の扇風機

むか~しのアンティークなものや体育館などにつける大型のものでは確かにガードもなくおっきなファンが剥き出しのものもありました。これにしてももしかすると設計された頃にはこれでよかったのかも知れません。

けれど、身長の高い外国人もたくさん乗るし、日本人の平均も人間工学ハンドブックのデータも見直さなきゃってくらいにかわってきている昨今ではヤバいんじゃないですかね。指とんじゃいます。

σ(^^)は鉄っちゃんじゃないので詳しくは知りませんが、今の鉄道のシートの幅を決める元になった人の標準的な横幅のデータってのも昭和何年だかって随分古いものを使ってるらしいですね。一生懸命7人掛けシートに7人座ってもらう工夫は各社しのぎを削っていますが、大本になるデータがそんなじゃ、そりゃ誰も座らんわさ。

28. 東海大付属病院の医療事故


先日、読者の方から以下のようなメールを頂きました。

また、悲しい医療事故が発生しましたが、“ミス”で終結しない事を切に願います。

航空機事故を中心に、これまでの日本の調査スタンスでは、ほとんどが、人間のミスとして処理されてしまい、そのミスを発生させた要因の追及がおざなりになる事が多いです。

今回の医療事故も、“看護婦にこれから注意させる”“色分けする”など安易な方法に落ち着くんでしょうが、根本の原因は“注入できる構造”にあるのだと気づいて欲しいと思います。

血管系と内服系のパイプの径を代えるとか、凹凸をつけておくとか、物理的に接続できないようにするべきと思います。

極論すれば、これを予測できなかったメーカ、医療機関、ひいては規格団体の責任であって、“ユーザー”である看護婦さんの責任にして欲しくないと切に願います。

まさにその通りだと思います。この方もユーザビリティの研究をされている方で、「ユーザビリティで救えたかもしれない」ことを痛切に感じていらっしゃるのだと思います。

今年に入って、同様の医療事故が相次いでいます。そのどれもが「単純なミス」です。

しかし、人は必ず「単純なミス」を犯します。どんなに注意していても、それが人の注意力に依存していれば、「必ず大丈夫」だとは決していえません。

では、ユーザビリティ上の配慮があれば「必ず大丈夫」かと問われれば、そうではないでしょう。しかし、ユーザの判断を、パイプの形状などによって、ユーザの外部に委ねることによって、「単純なミス」をする確率は確実に減らせるでしょう。

今回のことが契機となった委員会では、ユーザビリティ上の検討もされているようです。是非、検討だけで終わらせないで欲しいと思います。

関連ページ
使いやすさ日記/『82. 航空管制のニアミスについて』

27. ブレーキ警告~対応付けからの学習


運転免許をお持ちの方で、下の警告ランプの意味を答えられない方はまずいないんじ
ゃないかと思います。しかし本当に正しい意味を理解している方は意外に少ないようで
す。


ブレーキ警告ランプ

普段このランプが点灯するのを目にするケースと言えば、パーキングブレーキが引かれている場合が挙げられます。通常であればパーキングブレーキを解除すれば消灯します。この対応付けは自然でわかりやすいものなので、容易に学習がなされます。たとえ自動車教習所で正しい意味を教わったことがあっても、です。そもそもこの対応付けによる学習は正しい意味に反するものでもないですし。

しかし、もし以下の正しい意味をご存知ない方は、是非この機会に覚えておいて下さい。誤解したままでいるとシャレにならない事態につながる危険があります。

この警告ランプの正しい意味は、「ブレーキ系統に問題あり」です。パーキングブレーキを引いていなくても、ブレーキ液の不足で点灯します。これを単にパーキングブレーキの下げ忘れ警告と思っていた人が、ある日確かに下げても消えないので、電気的な接触不良と思い「近いうちに見てもらおう」くらいの気持ちで出発して、ブレーキが利かなくて焦りまくった、というケースを耳にします。パーキングブレーキを解除してもこのランプが消えなかったらブレーキ系統の他の箇所に問題があると思って下さい。つまり絶対に走行してはいけないのです。

逆に言えば、パーキングブレーキが引いてある状態って走行していなければ「異常」ではないんですよね。引いたまま走行しない限り警告がつかない仕様の方が正しい気がします。普段から点灯することで「異常」としての危機感が弱まり、本当に重大な異常な時にそう感じなくなると考えられます。「狼と羊飼いの少年」効果とでも名づけましょうか。

関連ページ
アイシン: クルマノウハウ: 第28回 警告灯の意味、知っていますか?(リンク先消滅)

26. 温度調節器は何処に?~操作の入口


先日、日本人間工学会のアーゴ部会に参加した際に、日記のネタを見つけてきました。

暖房機器の写真

右の写真は、壁際の床に立っているタイプの暖房機器(ホテルの部屋や大学の教室などによく見られるもの)を上から見たものです。

このタイプの暖房機器では一般的に、ON/OFFや風量調整をおこなうスイッチが、吹き出し口の横のフタの中にあります。

ですので、私は当然そういったモデルを持って、空調を操作しようと思ってフタを開けました。

すると、そこにはあるはずのスイッチがありません。普通であればここで、「やれ、困ったな」となるところですが、よく見るとなにやら文字が書いてあります。

拡大写真:「温度調節器はナイトテーブルにあります」

そう、この部屋ではベッドの脇のテーブルに照明などと一緒に空調のスイッチも移設されていたのです。そして、このシールが一枚貼ってあるだけで、そんなことは知らない客でも、ちゃんと空調を使うことができるわけです。また、テーブルにあると知っている人にとっても、このシールは何の悪影響も及ぼしません。

メンタルモデル説明図

このように、ユーザの目的に対して、ユーザが予め持っているメンタルモデルに適切な入口を用意することは、様々な人にとって使いやすいものを提供するための方法の一つです。

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