カテゴリー: 公共、住宅 (page 10 of 53)

642. 揺れる車内でもトイレはキレイに


男性用のトイレでは近年、「狙いを定めるマーク」の導入が着々と普及しています。これは、用を足す利用者がなぜか思わず狙ってしまうという心理を活用し、飛散や手前に零れるといった事故を防ぐことで、床や壁などの美化に効果が期待できるものです。

最近では男性用のトイレだけでなく、洋式便器でレーザポイントを使ったマークの紹介を先日の日記でも取り上げられていました。
533. 洋式便座に “ロックオン”~ターゲットポイントが付いている洋式便座~

このマーク自体、実は着々と進化していて、たとえば、ピストルの射撃を行うためのマトの形や蝿の形をしたマークなど、狙ってしまう効果を高める様々な工夫がされています。

私が先日、東海道新幹線のN700系に乗車したとき見かけたマークは、さらに進化していました。

三角形が3つ並んだターゲットマーク

一見、なんてことのない普通の三角形ですが、なんと、当たるとだんだん色が変ってきます。

変化の状況をイラストで表現してみました

当たっていることは行く末を見ればわかるのですが、フィードバックが搭載されたことで、「最後の一滴までこの的に当てよう」という気が増してきました。
揺れる新幹線の中では気を抜くと外れそうになることもありますが、この色が変わるマークのおかげで、ゲーム感覚で命中率が上がり、きれいなトイレへの貢献ができそうです。

ちなみに、使用後に水が流れると色が戻るので、また次の利用者も同じ気持ちで使えます。

641. 洗濯終了を電話でお知らせ!気が利くコインランドリー


季節の変わり目を感じるこの頃。
我が家も衣替えすべく、天気が良い週末にシーツや毛布をまとめて洗濯しようと思い立ちました。ところが、毛布などを家の洗濯機で一度に何枚も洗うと、私のマンションの狭いベランダでは干すスペースがとても足りません。そこで、近所にあるコインランドリーで、洗濯と乾燥をすることにしました。

大量の洗濯物をかついでコインランドリーに行ってみると、洗濯機の本体になにやら見慣れないテンキーが付いています。

本体前面のテンキー

説明書きによると、洗濯開始時にテンキーに電話番号を入力しておけば、洗濯終了を入力した番号まで知らせてくれるというのです!洗濯が終わるまで、コインランドリーで時間を潰そうと思っていたのですが、これは便利な機能だと思い、自分の番号を入力して一旦帰宅することにしました。自宅で衣替え作業に没頭していると、そこに洗濯終了を知らせる電話がかかってきました。

洗濯機に所要時間が表示されていて、いつ頃終わるか大体分かっていたのですが、この気が利くお知らせのおかげで終了直前まで作業を続けられ、洗濯物も終了後すぐに回収できたのです。無駄になるはずだった時間を有効に使い、面倒な衣替えを効率的に終わらせることができました。

ちなみに、入力した番号の取り扱いについて少し気になったので、後日メーカーの方に確認したところ、電話番号は終了通知時にテンキー上部の液晶に表示されることも無く、すぐにメモリから消去されるそうで、個人情報の取り扱いにも配慮がされています。

638. かゆいところに手の届く、新幹線のテーブルストッパー


仕事で東海道新幹線N700系に乗ったときのことです。お昼時だったので、大好きな駅弁を買ってから乗り込みました。

席についたら上着を脱いでリラックスしようとしたのですが、駅弁の袋を持ったままでは、簡単に脱げません。ひとまずその袋を置こうかと周囲を見渡したのですが、テーブルを出しては上着が脱ぎにくいし、ひざの上では安定しないので危険です。他に無いかと探していると、テーブルストッパーに目がとまりました。引っ掛けられそうだなぁ・・・と半信半疑で袋を掛けてみると、すんなり掛けることができたのです(写真1)。

写真1.N700系のフック

おかげですぐに上着を脱ぐことができ、おいしく駅弁を食べることができました。

ところで、この便利なテーブルストッパーの“フック”について、以前も存在したのか1つ前の新幹線700系を調べてみました。

まず700系は、分かりにくいですがストッパーの両端に“フック”があります(写真2)。ストッパーの上下が入れ替わっても使えるのですが、『引っ掛けられる』ことが分かりにくい形状になっています。実際私も、すぐに“フック”の存在に気づくことができませんでした。

写真2.700系

一方N700系は、ストッパーの軸に“フック”があります。(写真3)そのためストッパーの向きがどんな状態でも使うことができ、“フック”も1つなのでシンプルな形をしています。

写真3.N700系

こう比べてみると、700系よりもN700系の“フック”の方が目立ち、『引っ掛けられる』ことが分かるデザインになっていますね。

今回のような『ちょっと袋を置きたい』というユーザの利用シーンに、さりげなく答えてくれた“フック”・・・とても嬉しく思います。見かけたらぜひ使ってみてください。

632. みんなが共通してイメージする操作について考える~自動ドアの開け方


下の写真は、両方ともボタンを押すとドアが開くタイプの自動ドアです。『ボタンを押すのに“自動”ドアと呼んじゃうんですか?』という話はさておき、注目いただきたいのはボタンの押す場所です。

※自動ドア(じどうドア):扉の開閉を人力でなく電気などの動力によって行う設備のことを指すらしいです。

お店など街でよく見かけるタイプ(写真=左)。新幹線N700系の喫煙ルームを通路側から見たところ(写真=右)

左の写真はお店など街でよく見かける、出っぱっている部分が丸ごと押せるようになっているタイプです。写真のように物理的に押せるものの他に、手で触れるだけのものもありますね。「丸ごとボタン」としましょう。

一方、右の写真は新幹線N700系に設置されている喫煙ルームの自動ドアです。ドアから出っぱっている部分の、下の方にある緑色の丸いボタンを押すと自動ドアが開くようになっています。これは「丸いボタン」と呼びます。ん、ちょっとややこしいですか。「緑のボタン」に変更しましょう。話を続けます。

自動ドアが開く仕組みも同じ。ユーザが「ボタンを押す」という操作も同じです。「自動」「押して下さい」「PUSH」という文言とその並びもほぼ一緒です。

しかし、初めて「緑のボタン」の自動ドアを前にして、私は『押してください』の表示に導かれるがまま、素直に出っぱっている部分を押してしまい、何の反応もない自動ドアの前で固まってしまいました。
(しばらくその場で観察をしていたところ、やはり多くの人が出っぱっている部分に手をかけ、一回で自動ドアを開けることはできませんでした)

喫煙ルームは通路に面しているため、人がすれ違うときに肘や荷物でボタンを押してしまい、意図せず自動ドアが開いてしまう、というようなことを避けたデザインなのかもしれません。全席禁煙を謳い、喫煙車両を無くしたN700系であればなおのこと、タバコの煙には相当気を使っているのだと容易に想像がつきます。

しかし、私たちが日常的に触れることの多い、あるいは今まで“自動ドアを開ける行為”として経験してきたのは「丸ごとボタン」ではないでしょうか?

出っぱり部分も含めた「緑のボタン」の設置場所、大きさ、形状、表示文言。いずれのデザイン要素も「丸ごとボタン」の操作をユーザにイメージさせてしまいます。このうち、少なくとも1つのデザイン要素が違っているだけで、「丸ごとボタン」の操作をイメージせず、文字通り煙たがられる喫煙者でも問題なく開けられる自動ドアになるんじゃないかと思いました。

628. 「100段」ってどれくらい?親切だけど、惜しい張り紙


先日、副都心線渋谷駅の地下構内でこんな張り紙を見かけました。地上出口へと続く階段の上り口の、横の壁に張ってありました。

「この階段は地上階まで約 100段あります。」とある張り紙
階段のすぐ横には、エレベータがあります。

なるほど。上をのぞいてみるとこの階段には踊り場がいくつもあり、見通しが利きません。きっとこれは、「上りはじめたはいいが思いのほか地上まで遠く、エレベータを使えばよかったと後悔する」という事態を防ぐために、親切な駅員さんが張ってくださった張り紙なのでしょう。なかなか気が利いていると思います。

しかし、この張り紙を見た私は、「約100段」がどのくらい過酷な段数なのか、具体的にイメージすることができませんでした。結局、「そう辛いものでもないだろう」と甘く見て上ってしまい、やはり途中で後悔しました。この過酷さを事前に想像できていれば、迷いなくエレベータを使ったことでしょう…。

例えば、「ビルの5階分くらい」というような表現を追加してみるのはいかがでしょう。あまり正確な表現ではありませんが、こちらの方が自宅や職場の階段を上るときのいつもの感覚と比較しやすく、「100段」と言われるよりもずっと実感しやすいと思います。

理解力に優れた受け手ばかりとは限りません。正確な情報伝達も大事ですが、場合によっては、ある程度おおまかでも想像しやすい情報の方が、かえって役に立つものです。その場に適したよりよい情報とは何か、改めて考えさせられるきっかけとなった張り紙でした。

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