先日車を修理に出す機会があって、代車としてスズキのバレーノという車種を借りてしばらく使用しました。写真は同車のメーターパネルです。

パネル上部にアーチ状の青いライトが光っています。これはアイドリングしている状態ですが、走り出すと水色や黄緑色へと変化します。これは瞬間燃費の良し悪しを示していて、青<水色<黄緑色と順に燃費が良くなっていきます。この手のアンビエントな照明による情報伝達は過去に他社の車にも搭載されていますし、私自身も十数年前に業務で似たような提案をして試作品を使って試走したこともありますが、市販車でじっくり乗ったのは初めてでした。

自動車のメーターパネルはただでさえたくさんの警告ランプがあり、その意味を正しく理解していないユーザも少なからずいます。しかも昨今は燃費情報やクルーズコントロール関連、先進安全装置関連などの表示が上乗せされて情報量過多気味です。運転中に必要な情報が瞬時に読み取れなければならないメーターパネルにノイズとなる無駄な情報を無闇に増やすわけにはいきません。そこで、安全運転に関わるランプ類と比べるとやや優先度が落ちる燃費情報に関して、こうしたバックグラウンド的な表現を採っているんですね。最近の一般的な車種では「ECO」という文字や葉っぱを模したアイコンを、高燃費走行中に点灯させるのが主流です。また少しいい車になると、グラフィック表示で燃費数値を表示したりグラフを出すものもありますが、そういったものよりは直観的でかつ必要充分な情報量をもっている気がします(正確な数値は相当こだわる人以外には情報負荷でしょうし)。

こうした発想はMITの石井裕教授が考案したアンビエントディスプレイ[ASCII]という考え方に由来しています。意識して注視をしなくても周辺視で状況把握ができること、異常時にアラートを出すのではなく、平常時に平常運転であることをユーザに負担をかけずに伝達するといったものです。私は20年来の彼とこのアイデアのファンですが、ようやくさまざまなところで実用化されてきたなと感慨深いものがあります。

個人的にはタイヤの空気圧とかオイルの劣化とかもっと安全に深く関わり、かつ結果として燃費走行にも寄与する要素のフィードバックに使えたら嬉しいなと思いますが、それらの情報はそもそもセンサーで読み取れてない車種がほとんどなので、まずはできるところで、というところでしょうか。