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ユーザエクスペリエンス


用語解説

ユーザエクスペリエンス(user experience)



 Microsoft Office/Windows XPの「XP」がエクスペリエンスからきているということで、にわかに取りざたされるようになってきましたが、実はもう少し古い言葉で、例えばAppleはMacOS 8を発表した1997年にすでにこの言葉を使用しています。

http://www.apple.co.jp/news/1997/sep/01macos8.html

 さて、では実際にはユーザインターフェイスとの違いはなんでしょう?

 「インターフェイス」は元々「界面」という意味で、ユーザと道具が接する境界のことですが、ユーザインターフェイスという文脈ではそのうちの道具側、つまり道具の中の構造などを別にした外側、ユーザの目や手に触れて操作を受けとったり結果を返したりといったやりとりをする部分、と定義されると思います。

 一方、「エクスペリエンス」は「体験」とか「経験」という意味の英語です。ユーザが操作したこと、見たこと、聞いたこと、果ては感じたこと、思い出したこと。ユーザエクスペリエンスとは、人が製品を使った結果、認知したこと全てを指しているという意味で、むしろ人間の認知側の要素と言っていいのではないでしょうか。

 では、もう少し具体的に「良いユーザインターフェイス」と「良いユーザエクスペリエンス」の違いはなんでしょう?

 前者は「操作がわかりやすい」とか「文字の視認性が高い」とか「間違えたときに大事にならない配慮がしてある」とか個々の設計要素にフォーカスしています。

 後者は「気持ちよく使えた」、「嬉しかった」、「面白かった」など、製品の使用を通じてユーザが感じた結果のお話です。

 良いユーザインターフェイスは結果的に良いユーザエクスペリエンスにつながることが多いですが、良いユーザエクスペリエンスは、必ずしも良いユーザインターフェイスによってのみもたらされるとは限りません。TVゲームなどがその例です。ゲームは操作が難しく、間違いは許されず、必要な操作は謎として隠されています。これほど「難儀」なユーザインターフェイスはないでしょう。しかし人は自ら進んでこれを「体験」し、喜びを見出しています。ここに、良いユーザインターフェイスにフォーカスしているだけでは充足できない、良いユーザエクスペリエンスのための空白の要素が存在していると考えられます。

 また、我々の業界でユーザエクスペリエンスという言葉を使う時、もう一つ大事な含意があると思います。それは「ユーザが本来やりたかったことをさせているか」ということです。「良いユーザインターフェイス」が、ある機能がユーザにとって都合良くデザインされているかという観点なのに対し、「良いユーザエクスペリエンス」の方は、そもそもその機能がユーザのやりたかったことのためのものかどうか、まで視野に入れた観点だということです。この観点から設計をしないと、個々に「良い」インターフェイスを寄せ集めても、ユーザをHappyにできる製品は作れません。先のTVゲームの正反対の事例を挙げてみましょう。学校の授業です。学校の授業は、TVゲームに比べたら、ストレートに大事なことを教えてくれるし、間違えたらその場で知らせてくれるし、難しければ難易度を落として再度説明してくれる適応的なインターフェイスを持っています。完全に個々人にカスタマイズできてないという運用上の問題はありますが、インターフェイスとしてはかなり理想的な条件が揃っています。しかし(少なくとも学生の当時には)それが好意的に評価されることはあまりないと思います。何故なら例えそれがわかりやすく、覚えやすく、間違いにくくデザインされていたとしても、その結果得られるものが、その時学生本人が必要としているものと食い違っているからではないでしょうか?

 我々が「ユーザエクスペリエンスを重視」という表現を使う時、そこには高機能追求ではなく、ユーザが本当にやりたかったことが気持ちよくできることを目的としている、ということを強調している気がします。

(古田)

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